高齢者の4人に1人が認知症あるいは予備軍と言われており、認知症の患者さんが増加傾向にあります。
親が認知症となった場合、不動産売買は不可能となってしまいます。
介護には費用がかかりますので、不動産を売り払って費用をまかないたいと考えるお客様もいらっしゃるでしょう。
なぜ売却できないのかを見ていきながら、代理人でも売却できるようになる成年後見制度を解説していきましょう。
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弊社へのお問い合わせはこちら両親が認知症になると不動産売却できない理由
認知症の症状は、記憶障害や失語障害、失認、失行、段取りに関する障害などさまざまです。
不動産を所有している方が重度の認知症であれば、話をするのが難しいため、売買契約はできないと考えるお客様は多いです。
認知症の初期段階から重度に至るまでには10年前後かかると言われていますが、どの時点から不動産売却できなくなるのかわからない方も多いでしょう。
不動産売却ができる条件について、法律の内容から解説していきましょう。
不動産売却できる条件
民法第3条2項によると、行為の当事者に対して意思表示を求められたときに、当事者に意思能力がなければその行為自体が無効になると定められています。
不動産売却は法律行為の1つであり、不動産を所有している方自身が、売却行為でどのような結果が生じるのか、正常に判断できないと売却できなくなります。
したがって、認知症の方で正常な判断力がない場合、不動産売却は認められない可能性が高いでしょう。
注意していただきたいのは、当事者が病気を患っていても、周りから意思能力があると判断されたときは、当事者本人による不動産売却の手続きが可能とみなされるでしょう。
委任状での不動産の売却は条件によって不可
所有者が怪我や病気による入院で、不動産会社へ向かうのが難しい時は、委任状を準備して子どもが代理人となると、所有者の代わりに売却手続きができます。
しかし、所有者が重度の認知症の場合、委任状を用意して、子どもを代理人へ任命しても不動産を売り払う行為ができなくなります。
何らかの要因で所有者に意思能力がなければ、法的に有効な代理人を立てていると言えないからです。
つまり、代理人の任命には、所有者自身が代理人として任命するための正常な意思を持っていることが条件です。
意思能力がないと、いかなる理由でも売却は認められませんので売却するためには正当な手続きを踏む必要があります。
ただし、不動産の所有者が認知症であっても、意思能力があれば代理人を立てられますので、その場合は親の代わりに売却手続きはできます。
両親が認知症になったときの不動産売却に関するトラブルの事例
親が一人暮らししている中で認知症に罹患した場合、子どもが引き取って世話をするか、施設へ入所させるかの手段をとるでしょう。
いずれにせよ、以前暮らしていた家は空き家となる可能性が高いため、子どもは不動産売却を検討されるでしょう。
不動産を売却する際のよくあるトラブルを取り上げますので、トラブルを未然に防ぐための参考情報としてお役立てください。
兄弟や親族の許可なく不動産を売却した事例
病気になったのを理由に、兄弟や親族の許可をとらずに、勝手に両親が所有していた不動産を売却してしまい、家族間でトラブルとなった事例があります。
万が一、所有者が亡くなったとき、両親が所有していた不動産は共有名義の不動産となります。
所有者の判断能力がある状態での生前贈与や効力のある遺言書がなければ、名義人以外の不動産を売り払う行為はトラブルの原因になりますので避けた方が良いでしょう。
親に不動産を購入させたトラブル
介護するにあたり、広い居住スペースやバリアフリー機能の充実した物件ですと、認知症となった家族も生活が楽になると考えるお客様が多いです。
親に物件を買わせたり、お金を元にリフォームしたりするお客様がいらっしゃいますが、勝手な物件購入とリフォームは避けるのが望ましいです。
財産の使い込みは親族間のトラブルの原因となりますから、もし改築や新しい物件を必要とする時は、遺産の相続権のある家族へ相談しましょう。
介護費用のための不動産売却によるトラブル
病気が進行し、介護施設か自宅で介護する場合は介護費用がかかります。
有料の老人ホームで月30万円、特別養護老人ホームでは月13万円、自宅介護は月6万円が相場となります。
介護費用として、不動産を売却した場合もトラブルへと発展しやすいです。
家族の代表で介護にあたっていても、他の兄弟や親族は両親の所有していた不動産で介護を続けたい方針を持つ方もいらっしゃるからです。
やむを得ない理由で家を売り払いたい時は、遺産相続の対象である家族の許可を得てからにしましょう。
家族の許可が得られても、介護施設の資料や介護用品の領収書は必ず取っておき、売却で得られた資金の使い道がわかるようにすることをオススメします。
両親が認知症で不動産売却するために必要な成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症や知的障害といった理由で正常な判断が難しい方の代わりに、成年後見人が契約を結び、財産管理して所有者へ支援する制度です。
成年後見人は不必要な住宅改築で不利益な契約を本人が結んだ際の取り消しが可能です。
成年後見制度は、法定後見制度と任意後見制度があり、後者はさらに対象者の判断能力によって、「後見」「補佐」「補助」の3つの種類に分類され、権限が異なります。
法定後見制度を利用した不動産売却の手順
所有者や配偶者、市町村長などが家庭裁判所に審判の申し立てをします。
申し立てが受理された後、家庭裁判所の調査官が所有者と申立人、後見人の候補者へ事情聴取し、成年後見人の選任を認めるかを審理します。
場合によっては、依頼を受けた医師が所有者の意思能力を判断してもらうように医師の鑑定が必要な場合もあるでしょう。
家庭裁判所が成年後見人の審判をし、その後、後見人の登記をすると、不動産会社と媒介契約を結ぶ流れとなるでしょう。
後見人は無条件で不動産売却できず、もし居住用の不動産を処分する場合は、居住用不動産処分申立書を裁判所へ提出する必要があります。
不動産を売却する理由や売却後の資金の使い道などを申立書に記入して提出し、裁判所から許可が得られれば、不動産売却ができます。
任意後見について
裁判所が後見人を決める法定後見以外に、不動産の所有者が認知症になる前に、あらかじめ後見人を決めておく任意後見があります。
所有者の判断能力の低下後、本人や親族が裁判所に後見監督人の選任を申し立て、選任されると任意後見契約の効力が生じます。
任意後見人は親族でもその他の方で構いませんが、弁護士や司法書士が後見人となる場合は、報酬を支払う必要があるでしょう。
任意後見のメリットとして、万が一所有者が認知症になっても信頼できる方に今後の財産管理を任せられる点でしょう。
家族信託について
家族と契約を結び、財産管理を任せる家族信託があります。
家族信託では、財産管理を家族に委ねる委託者と、委託者からの依頼で財産管理する受託者がいます。
委託者と受託者以外に、不動産の利益を受け取る受益者がいる場合もあり、受益者を第三者にすると財産管理なしで利益が獲得可能です。
家族信託は受託者の権限を自由に設定できるので、後見人ではできない財産管理を任せられるのがメリットです。
さらに、成年後見制度は居住用の不動産を手放す時は、裁判所への申し立てが必要ですが、家族信託は裁判所からの介入なしで、家族で不動産の管理ができるのも利点でしょう。
まとめ
親が所有していた不動産を売却するには本人の意思能力があるのが条件となります。
すでに認知症となった場合は、成年後見制度を利用して成年後見人が契約を結んで、財産管理をする制度があります。
認知症となる前段階であれば、任意後見や家族信託もありますので、参考にしてください。
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